仕事帰り、バイクの後ろに跨がってちゃっかりそのまま君の家へ。









晩御飯も食べて一段落した後、君はシャワーを浴びてくると言ってこの部屋を出ていった。




僕も誘われたけど、一昨日入ったから断っておいて。



君は苦い顔をしたけど、今日はしぶしぶ了承してくれた、そのかわり明日は絶対入れと怒られたけど。
(だって僕はお風呂が嫌いなんだ)











そうしてしばしひとりの時間。



ただテレビを見てるのも暇だなぁ…






そう思いながら部屋を見渡して、



きれいな片付いた部屋だなぁとふと思う。あくまでも僕的規準だけど。






そしてふと、テレビが置いてある机の端の引き出しが薄く開いているのが何となく気になって。


そこをそっと引き出してみた。





一番上にあったのは、国際郵便で定番の赤と青の線がついた白い封筒。


すごいとしか言いようのない筆記体で書かれている宛先は今僕がいるここの住所。


差出人の住所はよく分からない…でもかろうじて、最後に書かれてるのはアイルランドな、気がする。





さすがに手紙の中まで見ようとは思わないし、見たとしても内容は理解出来ないだろうから、それは置いといて。


引き出しの中をもっと漁ってみることにする。







その次に出てきたのは何枚かの写真だった。


そのうちの一枚、家族らしき、集合写真。


ヒューの隣にはキャロちゃんに、黒兄。


後ろはお父さんお母さんにおじいちゃんおばあちゃんかな?




みんな、楽しそう…




それを眺めてたら何だかほほえましくてちょっぴり寂しくなって。




―でも、今はみんなに囲まれて嬉しいんだから!

ふるふると首を横に振って抱いたキモチを否定する。









そうして、次に見つけたのは、真っ黒なお財布。


普段使ってるのとは違う見覚えのないモノで、


使ってないのかと思いきや持ってみると予想外に重かった。





「…?」





二つ折りのそれを開き、質量のある小銭入れの中身を机の上にばらまいてみた。


そこに広がったのは大小色もさまざまなコインたち。




今まで見たこともないデザインにますます不思議になって、目についた一つをつまみ上げた。


よく見ると、竪琴のようなハープのようなモノ、周りには星がちりばめられた可愛い模様がついている。




何だか見てるだけでも楽しくなって、そんなコインたちをひとつ一つ拾いあげまじまじと眺めてた。









がちゃ、



そうしていると、この部屋の扉が開く音がした。





「何してるんだ…?」




顔を上げると、不思議そうにこっちを見るお風呂上がりの姿と目が合った。




「あ、ごめん。面白いモノ見つけたからつい」


「面白い物なんかこの部屋にあったか…、?」




そうして僕の隣に腰掛けて、僕の見てたモノを覗き込む。






「あぁ、これか」


「ね、これ何のコイン?」


「あっちのお金だよ」





僕と同じ様にひとつつまみ上げ、目を細めた。




「えっと、確か…ユーロだっけ」


「当たり」





そう言って君が微笑んだのが何だか嬉しくて。






「これ、可愛いねぇ…」


「そうか?じゃあそれ、やるよ」


「本当!?」


「あぁ。…でも、一応金だから大事にしとけよ?」





僕はにっこりと、大きくひとつ頷いた。


























―その日に貰った一枚のコインは、僕の財布のポケットに大切にしまってある。



時々取り出しては、日の光にかざして見たりして。


いつか、近い将来、これを本来の目的で使いたいなぁ…なんて思ったり。







きらり、





真ん中に描かれたアイリッシュハープが、眩しく光を反射させた。

















**********************************************************


一度は使ってみたかったこのネタ…!!
ホントアイルランドは素敵な国だv

ちなみに睦月はお風呂嫌い。3日にいっぺんくらいもいやいやさ(^^)


>>Back